傾聴とは観察力

親子で話をするときに相手の様子を見ているでしょうか?料理をしながらだったり、目を合わせずに壁越し、扉越しで会話をしていたら重要な気持ちの変化に気づけないかもしれません。傾聴には態度やうなづきなどさまざまな要素がありますが、最も重要なのは観察力です。


1.傾聴は情報交換ではない

悩みを抱えて、傾聴やカウンセリングをしてもらうとあまりこちらを見ない人が少なくないことに気づきます。3割は目を閉じたり、資料を見たりしていて、3割はこちらをなんとなく見ていて、残りの3割はメモを書いている。それでは話し手のエピソードを理解することはできても気持ちをキャッチすることは簡単ではありません。

1)言語と非言語の不一致を観察する

「大丈夫です」というセリフを言っている人が必ずしも大丈夫だと思っているとは限りません。首を横に振っているかもしれないし、目に涙を浮かべているかもしれません。傾聴は状況を把握することが目的ではなく、気持ちを聞くことが目的です。言葉にならないその思いをキャッチするために高度な観察は必須だと言えます。

2)タイミングを観察する

傾聴の主なスキルと言われる「うなずき」「あいづち」「伝え返し」などはいずれもタイミングが命です。10秒ずれてうなずかれても気持ちが動かないだけでなく、1秒ずれでもニュアンスが少しずれてしまいます。傾聴に慣れてくると話し手が発言する1秒前に「これから感情を込めた話が来る!」と察知できることも少なくありません。

3)非言語的な強弱を読む

話し手が無意識にするうなずきや身振りなどには出力の大きさがあります。大きくうなずくのか?小さくうなずくのか?自覚がない本当に小さなうなずきなのか?それによって、それに込める話し手の感情の強弱を察する手がかりになります。

4)情報に乗せられた気持ち

傾聴において重要なのは情報に乗せられた気持ちです。裁判のときの記録係の人は言語化されたことをメモしていけば良いかもしれませんが、傾聴においてはむしろ逆と言えます。情報も参考程度に大事ですが、気持ちがどのように揺れたかを知ること、観察することのほうが重要です。


2.観察力

傾聴の際に発揮すべき観察力にはどんなものがあるでしょうか?ここでは基本的な3つのポイントをご紹介します。

1)言語パターン

不登校・ひきこもりの生徒の家に訪問するときに親子、夫婦、お客さん(私)と子供などの間で交わされる言葉のパターンを観察します。フォーマルな言葉。カジュアルな言葉。幼児言葉。方言。スラング。若者言葉。どの局面でどのパターンを使っているかでそれぞれの関係性や警戒の度合いを読み取ることができます。お母さんと子供はツーカーで話ができるけれど、夫婦間はフォーマルな会話しかできないこともあります。また、訪問を繰り返すたびに子供が使う言葉が違ってきたり、夫婦の交わす言葉の種類が変わってくることもあります。観察によってそれを見極めることが大きな手がかりになります。

2)脳内の世界観を観察

観念動作と言って、私たちは何かを思い浮かべるとそれに関連した動作をしてしまいます。螺旋階段を説明しようとすると手や身体が螺旋階段の形に回ってしまったりします。話し手の身振りをよく観察しているだけで脳内でどんな処理が行われているかを読み取ることができます。例えば、ひきこもりの子と話をしているとその子の家の間取り、時計の位置などが把握できます。言語化しなくても観察によって脳内の世界観を読み取ることができるのです。

3)親子のアイコンタクト

第三者として、親子の間に入ると多くの子供が視線で親に何かメッセージを送ります。傾聴する側がその気で観察しているとそのパスを読み取ることができます。「僕こういうの答えられないじゃん!助けてよ!」「何でそういうこというの!かっこわるいじゃん」「どうしたらいいの私??」そんなSOSが目の前で行き交っているのを使わない手はありません。また、これらのアイコンタクトは親子ともにやや無意識にやっているので、このアイコンタクトとその返答にあたる反応に問題があることもあります。


3.観察力の鍛え方

情報化社会が発展するにつれて、私たちの観察力はどんどん低下しています。アメリカの事例ですが、恋愛が苦手な男性を実験台に30分ほどある女性と会話をさせ、一度トイレに立ってもらい、戻ってきた姿が似ている別の女性と何事もなかったかのように会話ができる男性がいるそうです。つまり、「相手が入れ替わった」ということにすら気づかないというのです。私たちは自分の目と耳で情報を得るのではなく、本やサイトから情報を得る方が楽なのです。だからこそ、観察力は年々低下していきます。ここでは傾聴に必要な観察力を鍛える方法をご紹介します。

1)観察に専念できる環境を作る

テレビを見ながら観察力のトレーニングをするのはお勧めですが、ドラマなど芝居をしている姿を観察してもリアリティがなかったり、本当の動きと違うこともあり、観察力を鍛える意味ではお勧めできません。お勧めなのは「徹子の部屋」のようなトーク、インタビュー番組です。比較的、表情や全身の動きを観察しやすいですし、やらせではないのでリアルな反応を観察できます。中井貴一さんが何回メガネに手を伸ばしているか?それはどんな時なのか?などテーマを持って見てみると観察力がアップしてきます。

慣れないうちは自分が傾聴をしながら観察するのは難易度が高いので、誰かと誰かが話をしている場面を観察するようにするのがポイントです。

2)自分を観察する

日常会話をしている時の自分の姿を観察する練習をしてください。「・・と思います」という言葉がやけに多いなとか、猫背だなとか、気付いていなかったけれど貧乏ゆすりしているなということに気づくだけでも自分自身のあり方のチェックにもなりますし、観察力を高めることにもつながります。

2件のコメント

  1. ピンバック: 傾聴の心得 5つ – オンライン傾聴講座

  2. 先日私が傾聴をしていたクライアントさんは、ある話題の時だけ早口になりました。しかし、その話題について深堀しようとするとクライアントさんから話題を変えてしまいました。それはきっと直接的に触れて欲しくなかったのか、私の態度が適していなかったのかと思います。感情が動く、確信に触れるからこそ、聴く側の在り方や聴き方が大事になりますね。

    名無しん坊

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