アルフレッド・アドラーと傾聴

アルフレッド・アドラーとは

アドラーは認知療法、NLPなどに影響及ぼした個人心理学の創設者です。人は自分の独自の世界観の中に住んでいるというアドラーの考え方は傾聴にも大きく関係があります。独自の世界観を知り、その人が自分の世界観に対しての専門家としての力を発揮できるようにすることがその人の主体性を強めることになります。

1.5つの基本前提

アドラーは次の5つの前提をベースに考えていました。

1)個人の主体性

アドラーは個人というのはそれ以上分割できない単位だとしています。その最小単位の個人が心身を使って目的に向かって行動しているのが人間と位置付けています。創造性を発揮して、変化を可能にしていく人間のあり方が本来あるべき姿であり、その主体性や創造性が非常に重要です。

2)目的論

個人は目的があって活動しています。それは個体保存や種族の保存、所属などの目的です。

3)全体論

アドラー心理学では「意識と無意識」とか「心と体」のように個人を分解することはしません。なので葛藤や対立という概念はなく、個人という塊が目標を達成するために動いていると定義しています。

4)社会統合論

個人はこれ以上バラバラにできず、矛盾や葛藤は認めないことから人間が抱える問題はすべて対人関係上の問題だとアドラーは考えていました。

5)仮装論

個人はマイナスからプラスに向かって行動しています。しかしそのマイナス、プラスという解釈は本人の中の世界観において判断されているので主観的なものでしかありません。

2.主体的な人間

アドラーは人間を主観的な視点を持った創造的で自己決定的な個人と見ていました。つまり、世界と言うのはその人が見ているように見えているし、その個人はその人にとっての専門家であると定義付けています。そして私たちはマイナスの感情プラスの感情に劣等感を優越感にしようとする性質があると彼は言っています。そしてそのマイナスからプラスに移るためには仕事と友情と親密さを手に入れないといけないとしています。

1)ライフスタイル

アドラーは個人の全人格をライフスタイルと呼びます。ライフスタイルと言うのはそれぞれの人が世界について抱いている考えや信念の集合であるといえます。傾聴をする時にその人が作り上げてきたその全人格=ライフスタイルと聴きだし理解することでその人の信念体系そのものを把握することができます。

2)家族布置

どのように家族のメンバーを見ているかがどんなに自分が育っていくかに影響与えています。家族のメンバー同士の相互作用が子供の人格を決めるのに最も重要だとアドラーは考えていました。子供は家族の中である位置を占めていますが、その位置づけは子供の主観的なものです。同じ家に暮らしているにもかかわらず世界観について、独自の見方が出てきます。
例えば、長男長女は弟や妹が生まれることで地位が下げられたような気がしたり悪い行動によって注目を引くこともできるけれど、下の子の世話役になることで第二の親のような役割をすることもできます。それがライフスタイルとなった結果、長男長女は高度なことを達成したり、完全主義者であったり、下の子からしたら反抗したくなる存在であることもあります。ただ、長男長女が病気であったりするとその関係性は大きく変わります。

3.アドラーの教育論

アドラーは教育をこのように考えていました。
子供は生まれながらにして善とか悪という存在として生まれてくるわけではなく、生育環境に影響されてどちらかになっていきます。もし、子供が継続的に不適切な行動するならば、その行動の裏にはそれを成り立たせている論理があります。別の言い方をすれば子供の行動は大人と同じように明確な目的があるのです。
アドラーは子供を教育する時、「子供に対していくための最善の方法は経験から学ぶことであり、何がうまくいって何がうまくいかないかを子ども自身が発見していくことだ」と信じていました。ですから、悪い行いを罰しても子どもの行動は改善されません。

4.子供の目標

個人心理学は人が目標に向かって進むものでそれは人生の早期において自動的に選択されるとしています。アドラーの重要な後継者であるルドルフ・ドライカースは子供の目標を以下の4つと定義しました。不登校の子どもの傾聴をしていると以下の4つのどれかにはてはまることが実際に少なくありません。傾聴をして、話し手の心の中を見立てる時の参考になることがあります。

1)注目

すべての子供が注目されることを求めています。もし普通の肯定的な方法で注目が得られないと、否定的な方法つかってでも注目を集めようとします。それがエスカレートすると破壊的な方法、破滅的な方法とってでも注目を得ようとします。それを張する事は注目を得たいと言う目的を達成させてしまうので、その問題行動を証明してしまう可能性があります。

2)力

すべての子供が自分に価値があることを証明するために力強くありたいと思っています。自己肯定感が高い子供は勉強などの肯定的なテーマに力を注いでいきます。一方で自己肯定感が低い子供はコントロールする力を手に入れるために否定的な方法用いる傾向があります。

3)復讐

親に気をかけてもらえなかった子供は少しでも自分の影響力が残っている感じを得るために復讐に訴えます。復讐をすることで自分の存在価値を確認することができるからです。

4)無気力

これは一見するとわかりにくい目標ですが無気力な状態になることで注目を浴びることができます。またさらに何もしなければ失敗することもないし、がっかりすることもありません。無気力でいる事はある意味での心理的安定につながりますが、うつ病などになってしまうこともあります。
アドラー派のカウンセリング手法アドラーは変化とは可能性を見出すことで望ましいことだと考えていました。

5.傾聴の重要性

アドラー心理学においても傾聴は非常に重要なスキルです。

1)傾聴による自己理解

傾聴をすることによって、自分自身がどのような目標を持っている、持ってしまっているかを知ることができます。もしそれが問題である時がついたら「変える」「変えない」の二者択一をすることができます。傾聴における「考え方が整理される」という現象がこれに当たります。

2)古い私的論理

自分がどんな目標に対して、どのような動機付けをしているかを傾聴によって明らかにすることができれば、古い考え方、私的な論理を見直し、よりよい方法に切り替えることができます。

3)所属感

傾聴によるラポールは所属感を強めます。所属感があるということは自分が他の人と対等であるという感覚につながるので、世の中に自分の居場所があると感じることができます。

4)不完全である勇気

所属感を十分に感じている人は間違えても大丈夫だと思うことができます。傾聴を通して、自分が完全に受容されたと感じられると自分が不完全でいてもいいんだとさえ感じることができます。

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