カウンセリングにおいて見立てをする事

カウンセリングにおいて見立てをする事

カウンセリングにおいて見立てをする事

「この人は人間関係について恐怖心が拭えずにいるな」

「この人は自信のなさの裏返しで相手を攻撃しているな」

「この人には楽しむという経験が少ないのかな」

傾聴をしているといろいろな角度からその人が今どういう状況にあるかを「見立て」ます。

「うつ病」「統合失調症」「摂食障害」などの名前をつける事も「見立て」の一部と言えます。

 

1.見立てのメリットとデメリット

「見立て」とは話し手をある種の枠組みにはめる事でもあります。

例えば、春になるとチューリップの花が咲きます。

「あ、チューリップのお花畑だ」

と一度ある種の「見立て」をしてしまうとチューリップに似た別の花が混ざっていたり、ひとつとして同じ色味、形の花がない事を忘れてしまいます。

 

1)見立てのデメリット

「見立て」をするデメリットは「Aさんはチューリップ」と見立ててしまったら別の可能性を探す事をしようとしなくなってしまう事です。傾聴や心理カウンセリングの現場でよく見かけるのが「これはトラウマだ」と決めつけてしまったり、「あの人は本当は怖いんですよ」のように枠組みにはめようとすることです。

傾聴において大事なのは99.9%の人が当てはまるようなマジョリティー側の「見立て」ではなく、残り、0.1%以下の人が当てはまるようなマイノリティー側の「見立て」です。

「睡眠をとったら体調が回復する」

マジョリティーの人はこういう感覚を持っているかもしれません。しかし、一部のうつ病の人などは睡眠後の方が体調が悪い傾向にあります。「良く寝られた?」という質問がすでに見立て違いなのです。

そして、傾聴や心理カウンセリングに慣れてくると「うつ病の人は寝る前の方が睡眠後よりも調子が良い」という枠組みを作ります。「うつ病の人は寝て起きた時の方が調子が悪いんだよ!」という見立てをします。しかし、うつ病の人の中にも睡眠後の調子は良い人もいます。

「それではどう見立てたら良いの?」

と思うかもしれません。傾聴の基本はその人本人を理解する事にあります。その人が「寝ると調子が悪い」というのか「寝ると調子が良い」というのか「ケースによる」というのかなどを傾聴して、理解して、最終的に(この人の場合には)「寝て起きると調子が悪い」と見立てるのです。

整理すると

「睡眠後に調子が良い人と悪い人とがいる」

この知識は役に立ちます。「チェックポイントが一つそこにありますよ!」という意味でです。でも、目の前にいる人がどのタイプかはわからないので、傾聴をして、その傾向がその人の場合どうなっているのかを理解するのです。

「見立て」を一度してしまうとその枠組みではないものの見方ができなくなってしまいます。これは私たち人間の特性です。

だからこそ、「見立て」は安易に一般論をあてはめるのではなく、その人の場合をしっかり傾聴する必要があります。

 

2)見立てのメリット

「見立て」にはメリットもあります。

統計上、一定の割合で「寝られなくなる人がいる」その中でも「寝入りが悪い(入眠障害)」「途中で目がさめる(中途覚醒)」「朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)」、その他昼夜逆転などの現象が起きる人や数日全く寝られなかったり、その逆がおきる人もいます。そんな枠組みがあるんだと頭に入れた上で、「この人はどのカテゴリーに近いんだろう?」と傾聴をしていくことができます。モノサシが全くないとそれが難しいことです。一見するとメリットとデメリットが矛盾しているように感じる方もいるかと思いますが、実際に現場で使ってみると全く違うことがわかります。

デメリットで挙げた「見立て」の使い方では聴き手が最初から「男性」または「女性」のような分類を用意して、話し手をそれに割り当てます。メリットで挙げた「見立て」の場合には『「性別」というものがあるんだ』という観点だけを使って、それについてその人はどういう感覚、価値観を持っているか?を傾聴していきます。LGBTという言葉がありますが、後者の枠組みで「見立て」を使う場合には性別の種類がいくつあったとしてもその人のことを理解することができます。

 

2.類型論的な見立て

クレッチマー(精神科医:ドイツ)は20世紀初頭に体型(体つき)と性格が連動しているというタイプ分類(類型論)を唱えました。クレッチマーは「体型と性格は関係がありそうだ」と精神科医をする中で気づきました。精神疾患の分類をしていると躁鬱病の患者には肥満型の人が多く、統合失調症の人にはやせ型の人が多いことに気づきました。8000人を対象にそれを検証するべく、体型と精神疾患の関連性を調べたところ躁鬱病の人の65%が肥満型の体型、統合失調症の50%がやせ型の体型であったことがわかりました。この結果から見るとクレッチマーの見立てはかなりの割合で当てはまっていると言えます。

しかし、そんな「肥満型」「やせ型」という分類だけで人を区別することは見立てのデメリットでご説明したような問題があります。つまり、75億人いる人を数パターンの型にはめるという無理がある方法だからです。

誤解や偏見を含んでしまう可能性があることを理解した上で参考にすることには価値があります。

NLP(神経言語プログラミング)という心理学の開発の過程で、視覚優位(V)の人は眼球を上に向けて過去の出来事をイメージで思い出す傾向があり、聴覚優位(A)の人は横、触覚優位(K)の人は下を見るという見立てがあります。この法則もエビデンスを重視する立場の人たちには否定されていますが、現場においては「この人は上を見て映像を想起している」ということを確認すればそれ以降、その人の眼球動作はその人の脳内を読み取る参考になり得るのです。現場では75億人に当てはまる必要はないからです。

類型論は使い方を間違えなければ、非常に簡単で便利な考え方です。類型論に当てはめて人を仕分けするのではなく、人を理解するために類型論的な見立てをすることは役に立ちます。

3.特性論的な見立て

交流分析ではその人の中にPACという3つの要素(または5つの要素)に分けてどれがどれくらい強いかで分類する物です。ドラクエなどのキャラクターの能力パラメーターの考え方が特性論的な考え方です。HP(ヒットポイント:体力)MP(マジックポイント:魔法を使うための力)ちから(腕力、ダメージに関係する)すばやさ(略)・・・この特性論の長所は組み合わせによって、ほぼ無限のパターンを表現することができることです。

全体型-詳細型 大雑把か細かいか
目的志向-回避志向 ゴールを重視するか問題を重視するか?

例えばこのふた組のパラメータ(特性語)を使うことで4つのタイプの人を表現することができます。

  • 全体型+目的志向
  • 全体型+回避志向
  • 詳細型+目的志向
  • 詳細型+回避志向

のようになります。パラメータが10個あれば1024通りの組み合わせが出てきます。もし、全体型(32%)のような考え方を持ち出せば、この組み合わせだけでも100の10乗通りになるでしょうか?

ただ、組み合わせの数が多いほど理解したり疎通したりすることが困難になります。複雑すぎる見立てでは対処の仕方がよくわかりません。傾聴においてはその人の悩みや問題と密接に関係があると思われるパラメーター(特性語)をピックアップして、この人は「全体型(大雑把)」な傾向が特に強い。のように見立てていくことができます。

 

4.力動論的な見立て

その人の中にいくつかの部分(パート)を見出し、それぞれの関係性、力関係、作用関係を理解していく方法です。ただし、これらは器質的な部位を指しているのではなく、仮設的なモデルを指します。例えばフロイトは「意識」「無意識」というパートに分けました。

意識できない無意識と呼ばれる部分に抑圧された思い、エネルギーがあり、それが症状となっているという見立て方です。

本人が自覚できていない「無意識」の領域に症状の原因があると見立てるのです。

インナーチャイルドのワークなどでは自分の中にある子供の部分が未消化の感情を抱えていると見立てたりします。

イメージワークや催眠療法ではそれが映像、物、キャラクターのような物としてでてきます。これを外在化と呼びます。傾聴をする中でインナーチャイルド、インナーペアレントのように心理療法的に名前が付けられた物としてあらわれることもありますし、その人独自のイメージとして表現されることもあります。その外在化されたイメージと対話をし、ある意味で傾聴をすることによって問題が解消されていきます。

このイメージが映像ではなく、身体的な感覚として外在化されることもあります。フォーカシングをはじめとしたアプローチでは意味を持った身体感覚としてのパートを見出します。特にフォーカシングではその意味を持った感覚(フェルトセンスと呼びます)の背後には感情が隠れていると見立てることがよくあります。

言いたいことを言わせてもらえなかったり、意見を無視されたりすると喉のあたりに違和感を感じ、フェルトセンスと呼ばれるある種の感覚が喉のあたりにあって、何かを訴えている。そんな風に見立てます。その見立てが成立すれば、その部分との対話を試みて、フェルトセンスに対して傾聴を行い、その部分に隠された気持ちを昇華していくことで問題が解決したりします。

 

5.対処をする前に必ず見立てる

傾聴をして、共感するまでなら見立てが明確になっていなくても問題にならないことも多いですが、傾聴から継続して、心理療法を行う場合などには「見立て」が重要になってきます。何となく判断して心理療法を適用すれば、うまくいかなかったときに何がどう作用したかを見極めることが困難になるだけでなく、心理療法によって症状が悪化してしまったときにも対処できなくなります。

正解かどうかではなく、「どう判断したからこの心理療法を適用した」と明確に意識して対処することが望ましいと言えます。

最近では「◯◯のワーク」を習って、相手を見極めずに使ってしまう人が増えてきました。離人症が強い人や統合失調症の人に瞑想をやらせたり、心身症の人に安易にフォーカシングを使ったり、希死念慮が幼少期からある人に催眠療法を安易に使えば症状を強化して悪化させてしまいます。誰にでも適用できる万能な心理療法などありません。それは「ビタミンCを飲んでおけばすべての風邪に有効だ」と言っているようなものです。必ず見立てをして、「抗生物質なのか?」「解熱剤なのか?」それとも、、と対処方法を見立てに連想させる必要があります。

見立ては座学で覚えると頭でっかちになってしまうので実技の中で身につけていくことをお勧めしますが、オンライン傾聴講座では練習会や講義の中で「見立て」や「個人差」などが話題になることがよくあります。そのような場を通して、さまざまな症例、見立て、対処方法などに触れてください。くれぐれも2,3個のパターンを盲信して、人に当てはめてしまうことのないように注意してください。ひとりひとり心の形は違うのですから。

 

 

10件のコメント

  1. 例えば…極端な話ではありますが
    痩せ型の方が2人、何度も検査をして器質的な問題が見つからないのに、主として「食欲がない」と訴えている場合。

    同じように対応したのでは、全くの逆効果を生むこともあるというのも一例かもしれません。

    摂食障害の方の中には、患者自身も気付かぬうちに周りの言葉が病気を造り出してしまうこともあるので。

    見た目や表出している問題にばかり気をとられると、相談者を思わぬ方向に誘導してしまうこともあると思います。しかし恐れてばかりでも、白々しいところです。

    見立てとはまるで点描のように、近くでみれば単なる点でしかないのに、離れて見れば表情豊かな似顔絵かもしれない。逆に単なる似顔絵だと思って遠くから眺めていたら、実はメッセージ性のある小さな言葉を散りばめた点描かもしれない。近くでみればすぐに気付くようなことも、最初に似顔絵だと決め付けてしまえば、それ以上の何物でもないのかな、と思います。

    良くも悪くも、人間にはたくさんの可能性があり得るという感じです(^-^)

    1. Author

      マッチングで済むような内容なら傾聴やカウンセリングはいらないですよねー
      それに表せないとこに悩みがありますから!

      ただ、分類があるから外れているとわかる部分もあります。話し手を中心にして、見立てのツールを使う。これが逆にならないようにすることですね!

  2. インナー◯◯、なるほどです。それっぽいな、と思うことありますよね。カウンセラーみたいだね、って言われたら、私はうれしいです。
    目指してるものに分類された時はうれしいかもしれませんね。

    1. Author

      なるほどー
      そう言われるように頑張りましょう!
      傾聴する人を表す一般的な用語ってないですよね!

  3. 血液型で自分や他人を分類しようとする人がいますが、それと似ていると思いました。傾聴してもらって、わかってもらいたいことを一生懸命しゃべったた後に、◯◯ですね、なんて、何か簡単に分類されるようなことを言われたら、なんだかがっかりします。この人は私のことを本当に理解してくれた、うれしい!そう思ってもらえる傾聴ができるようになりたいです。

    1. Author

      カウンセリングの講義でタイプ分類的なことを教えるとその日の夜に家族にそれを試して「お前は◯◯タイプだな」って言ってしまってもめちゃう人が必ずいます。大切な人を助けるためにこそっと見たてるのは大事ですが、無神経に伝えたら確実にもめますよ! ^^
      見立てて、言わない。 大事ですね!

  4. とても深いテーマでした。この人はどんな感じの人かな?と考えるのにある程度のモノサシというか見立てが必要になるけど、よく分からないなあ。。あんな感じかなこんな感じかなと言ってる間に寄せている関心が、「なんか分かったような気がする!○○タイプだ!そう言えば△△さんと一緒だわ。。だったらこう言ったらこう返ってくるだろうし、なんだなんだ」と思った瞬間に、対象から興味・関心を失っていたり。。
    そうなったら、気持ちの理解も共感も無いですよね。。
    となるとイメージは、双眼鏡を構えて、木を見て森を見ずまでいかず、木にも森にもピントが合わないような、なんとなく全体像と細かい部分とを両方掴みながら、その状態で、相手に寄り添っているうちに出てくる感情面にフォーカスするということでしょうか?。。
    なんか、例えの方が分かりづらくなってしまったような。。
    難しいけど重要なテーマと感じました!^_^

    1. Author

      確かに難しいですよね
      木も森も同時に見なきゃダメということですかね〜
      傾聴をスキルだと言って軽く捉える風潮が変わり、傾聴は難しいけれど人を思いやる重要な関わり方だ。人生そのもののようだ。となって欲しいです。かずさんありがとうございます!!!!

    2. かずさん
      読み応えありましたよね。自分に置き換えて、少し反省する部分も、、、。改めて多様性を知ったり、精神的な疾患を知る事も大事なんだと思いました。

    3. Author

      教師特有のインナー教師とか、公務員特有のインナー公務員のようなものを感じることも現場ではありますね。職場や肩書きに作られる性格のようなものですかね〜
      「ああ、この人の中のインナー教師が目覚めちゃったよ!」と感じるような
      それらを総合すると多様性と言うのでしょうが、いろいろな見立ての切口がありますね。病名だけが切口ということでもないですから!
      頑張って書いた甲斐がありました!ありがとうございます!
      疑問があれば加筆しますよ!!

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