認知症の方への傾聴(ペーシング)

認知症の方への傾聴(ペーシング)

介護の業界では傾聴はとても馴染みのある言葉です。特に認知症の方への関わりでは、傾聴は欠かす事は出来ません。ここでは、その中でも有効なペーシングについてお伝えしたいと思います。

1.世界観を合わせる

ペーシングとは、相手の状態や話し方や呼吸を合わせる事です。その中でも認知症の方の見えている世界に合わせる事が最も重要です。認知症の方の症状は実に多種多様で、認知症にその方の性格や生育歴などが合わさって、理解し難い話をされる方もいます。
その中でも良くあるのが、すでにご飯を食べているにもかかわらず、「ご飯を食べてないんだけど」と話される場面です。ここで、真実である「もう食べましたよ」とお伝えする事が表面的には成功する場合もあります。じっくりと傾聴出来ない場面もありますから、そのようにお伝えせざるを得ない事もあるでしょう。しかし、もし自分がご飯を食べていないのに、「もう食べましたよ」と言われたらどう思うでしょうか?
しっかりしていると思っている方なら「バカにされた!」と思うでしょう。
ある程度年齢を重ねられた方なら「私、どうかしちゃったのかしら?」と不安になるかもしれません。
いずれにしろ良い感情にはなりませんよね。認知症の方は、記憶は忘れてしまっても、その時の感情は残ります。こういう場合は、ご飯を食べていないと思っている認知症の方の世界観に合わせ、共感する事が望ましい対応でしょう。そして、その方の気持ちや健康状態にあった対応をします。
・ご飯を提供する事が難しければ、代わりにおやつをお出しする。
・真夜中の場合であれば、「今から作ってきますので、寝て待ってて下さいね。出来たら持って来ますから」とお伝えする。
などの対応が考えられるでしょう。
たとえ現実と違う事を認知症の方が思われていたとしても、その方にとってはそれが真実です。気持ちに寄り添い、共感する事を心がけてみて下さい。

2.演じる

認知症の方の中には、ご家族を他人と思ったり、逆に施設で働いている職員を自分の子供だと思ったりされる事が良くあります。もし、職員で無く子供として関わる事がその方の幸せに繋がるのであれば、その役を演じるのも一つです。認知症の方への対応に慣れていない方は、嘘を付くという事に抵抗を感じる方もいます。しかし、嘘を付いているのではなく、そのような役を演じていると思えば、気持ちにも変化があるかもしれません。
実際にあった例として、元教師をしていた方に対して、教え子のフリをして傾聴を行った事があります。職員だと思っていたら、実は教え子だったという変化により、その方との心の距離はグッと縮まり、非常に多くの笑顔とともに昔話に花を咲かせる事が出来ました。認知症の方ですので、同じ話を何度もされますから、一度聴いた固有名詞やエピソードを改めてこちらから話す事により、不信感が薄らぎ信用して頂けるという効果もありました。

3.その他

1.目線を合わせる

ついつい座っている方に対し立ったまま話をしてしまう事もあると思います。しかし、座っている方にとっては、想像以上に圧迫感を感じる場合もありますので、目線を合わせる事を意識すると傾聴にも変化があるかもしれません。

2.方言

地方出身の方には方言でお話をするのも有効です。もちろん、バカにされたと感じるような言い方にならないように気を付ける必要はありますが、自分の地元の言葉で話をしてくれるという体験は、親しみを感じ喜んで下さる事が多いように思います。

3.ジェスチャー

ご高齢になると耳が聞こえづらくなる方も多いので、ジェスチャーでのコミュニケーションも大切です。場面場面でこちらの意思を伝えるという事以外にも、ちょっとした挨拶として、その方が普段している挨拶のジェスチャーを真似ると心の距離がグッと縮まります。
具体例としては、手をあげる、深々とお辞儀をする、敬礼などです。その為にも、個々の方がどのような動きをされているか普段から観察しておく事が大切でしょう。

3件のコメント

  1. 認知症はすごく辛い事です、自分がしている行為が分かっていないのでこちら側見ればストレスの溜まる行為かもしれません。でも、そのストレスは周りの人はどこかで発散すればいいので問題ではないです。
    認知症の方と一緒に居て話をして心を通わせるのに努力は必要ですね。

    1. 認知症の方は認知症の方なりの辛さをお持ちだと思います。カウンセリングや傾聴をする方は 自分が認知症になった経験がありませんが、それでも寄り添っていると思います。少しでも認知症の方が気持ちが温かくなるればいいなと思いこのサイトを作っています。

    2. コメントありがとうございます。認知症の方への対応は難しいですよね。今後、地域で認知症の方の見守りをしなければいけない時代になってきますので、そういう意味でも傾聴を多くの方が身に付けてもらえたらと思います。

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