8 あいづち


8 あいづち

あいづちとは話し手の話に「声」を出して反応することと言えます。「へぇ!」「はい!」「うん」どのセリフを言うかも大事かもしれませんが、最も大事なのはタイミングです。


1.感情が動いたら音を発する

適切なあいづちの打ち方の基本は「感情:気持ち」に反応することです。話し手をよく観察していて、感情が動いた瞬間に「おお!」「ああ!」なんと発音しても良いので口から音を発します。あえて「音」とお伝えしているのは工夫した単語で伝え返そうとしてタイミングがずれたら意味がないからです。話し手が感情を込めてから0.5秒以内を目安に「ああ!」と音を出します。

 

1)声の震え方に注意

感情がこもると声の質が変化します。喉の奥や胸のあたりが震えているような声になったり、語気が強くなることもあります。「嬉しい」「楽しい」「つらい」のような感情を表す言葉を発するときに感情がこもることもありますが、「母が、、」「会社で、、」のような感情とは関係がなさそうな言葉を発しているときに声の震え方が変わることがあります。「母」に関するある場面を思い出して、感情を震わせながら説明をしようとしていると推測できます。そんなときには今話しているセリフが終わったあたりで「へぇ〜」(感慨深く)とあいづちを打つと「ああ!つたわった!」と感じてもらいやすくなります。

お母さんに心配をかけないように甘えすぎないようにと思って「大丈夫だよ!」と言ったのにその言葉の響きが震えていたのに気がついたのか、お母さんは「そお?」と疑問混じりのあいづちを打ちました。心の中がお母さんには見えているんだと思ったら涙が溢れてきました。「本当は大丈夫じゃない!!」(大学生)

言葉にしたものに反応するのは注意深ければ誰にでもできます。一方で言葉ではない情報(非言語情報)に気がついて反応することができれば、「大事にされているな」「真剣に向き合ってくれているな」「すごいな」「お見通しだな」「頼りになるな」とより深い傾聴につながる信頼関係を構築できます。

 

2)手が動き始める

傾聴の序盤は静かに姿勢を変えずに淡々と話をしていた人が中盤になって興奮してくると身振りをするようになります。伝えたい内容を思い浮かべて、話し手の中でその場面の臨場感が高まるとその場にいるかのように手が動いてしまうのです。それはその話に没入していることを意味しますから、傾聴の際に手が動き始めるのは良い傾向です。手の動き具合から感情の波を読み取ることができます。

人の脳は「大脳新皮質(論理)」「大脳辺縁系(心)」「脳幹(身体)」とそれぞれ役割が異なる部位があります。序盤は大脳新皮質だけで話をしているので身体が動きません。それが大脳辺縁系を使い、脳全体を使うようになってくると心身が動き始めます。心の深いところから出てきた言葉と理屈で出てきた言葉を聴き分けることができるようになります。

 

3)感情を示す言葉

「嬉しい」「楽しかった」「頑張った」「イライラする」といった感情を表す表現には多くの場合感情がともなっています。楽しそうに「楽しかった」と言っているように聴こえたら「うん」とあいづちを打っても良いでしょう。ただ、注意が必要なのは不満そうに「楽しかった」と言っていたり、感情を込めずに「楽しかった」と言っている時です。聴き手は(本当かな?)と思いながら慎重に対応します。言葉とは違う感情を持っている可能性が高いからです。

 


2.あいづちのバリエーション

あいづちは「言葉」ですからたくさんのバリエーションがあります。ここでは有効な使い分けを学びます。

 

1)基準となるあいづち

一生懸命に傾聴している最中により適切なあいづちを探すのは難しいものです。自分自身のタイプ、キャラクターにあったあいづちを2,3個決めてそれを基準として使います。「へぇ〜」というあいづちの声の大きさや言葉の長さを微妙に変えるだけでも十分なあいづちになります。あいづちをする時に大事なのはタイミングですから、工夫せずにタイミングがきたらすぐにできるようなあいづちを探しておいてください。

 

2)先を促すあいづち

リズミカルにあいづちを打つと話し手はリズムに乗って続きを話しやすくなります。軽めのトーンでリズミカルに「うんうん」「へぇ〜へぇ〜それで?」のような短い言葉を使うのがコツです。話し手の発した言葉からリズムが始まりますので、話し終わりから間を空けずに「うんうん」と返します。間を空けてしまうと「間」と「うんうん」のリズムが違うのでおかしな感じになってしまいます。

 

3)受け止めるあいづち

田舎のおばあちゃんがゆっくりなペースで話を聴いてくれる時のようなスローテンポなあいづちは感情を感慨深く受け止めたようなニュアンスになります。「・・・そうかい!・・・うん・・うん」と身体の細胞の一つ一つに話しての言葉、気持ちを染み込ませて、味わって、あいづちを打ちます。温泉に入って、温かさに全身を包まれて、肩までつかってから「・・・っはぁ〜〜」と深い呼吸をするかのような受け止め方です。

70歳くらいの人に傾聴をしてもらった時のことです。少しだけ微笑んで、こちらをずっと見ていたその人は絶妙なタイミングで「へぇ〜〜〜っ、、、うん、、うん」とやや間延びしたような味わっちゃってしばらく帰ってこないようなあいづちをしてくれました。たぶん、一度も切れ味の良い質問はされていないと思いますが、いつの間にかその雰囲気に飲み込まれるように今までにないくらいたくさん話をしてしまいました。(30歳 会社員)

大きな感情を受け止める時には話が止まってしまうくらいじっくりと味わって受け止めます。これまでリズミカルに話を聴いていたとすればこれは大きなインパクトになります。上記に温泉の例を書きましたが、美味しいものをじっくり味わった時。身体を酷使した後の冷たいビールを一口飲んだ時。草原で深呼吸をして身体の力を抜いた時。そんな時に身体に染み込んでくるある感覚を感じると思います。その感覚を味わいながらあいづちを打つと上手くできます。

 


3.あいづちのコツ

あえて、あいづちに意味をもたせて話のリズムを変えることもできます。上手に使えば、話し手が自分からどんどん話をしてくれるようになります。

1)さすが

ある程度傾聴が進んで、話し手の性格や癖がわかってきてからの武勇伝のような話であれば「さすが」というあいづちは非常に効果的です。使うタイミングさえ間違えなければ「さすが」と言ったことでさらに関係性が良くなります。

2)だからこそですね

「◯◯さんだからこそできたんですね」「◯◯と考えていたからこそ」「◯◯を経験されたからこそ」とその人じゃなければ成立しなかったかのようにあいづちを打ちます。その人の自己肯定感や自分の存在価値を感じてもらう伝え方です。

3)縁ですね

ある出来事や出会い、アクシデントなどを「縁」と表現すると角が立ちにくいものです。「それは何かの縁のようですね」とあいづちを打つと何か深いものを感じ取っているようなニュアンスになります。

4)ありがたい

感謝の言葉は否定しにくいものです。それだけに「ありがたいです」という言葉はタイミングに関わらず文脈がおかしくならなければ使いやすい言葉でもあります。ただし、「ありがたい」を言いすぎると聖人君子のようになってしまい、距離を取られてしまうこともあります。

5)知らなかった

話し手が説明好き、うんちく好きだと判断したら「知らなかった」というあいづちが効果的です。話し手のプライドを刺激し「そうだろう!!」という気持ちになってもらいやすいあいづちです。「知らなかった」と言って良いタイミングかどうかの見極めを誤らなければ、さらにうんちくを語ってくれます。

6)驚きました

驚くような場面で驚いたように言わないと意味がありませんが、息を飲んで、、間を空けて、、「驚きました」というとぐっと突き刺さったような、今までにそんな経験をしていないようなニュアンスになります。

7)はじめてです

「長年、やっていますが、はじめてです」これはその人の経験や発言の貴重さを際立たせるあいづちです。「はじめて聞きました」のような使い方でも相手の自尊心が高まります。

8)論外ですね

話し手がどの立場で話をしているかがわかるまで傾聴できたら、同じ立場に立って、反対側の人に向かって「論外ですね」と強く反発すると連帯感が出ます。

 


▼「あいづち」まとめ▲

ここでは「あいづち」についてご紹介しました。

  • あいづち
  • 感情が動いたら音を発する
  • 声の震え方に注意
  • 手が動き始める
  • 感情を示す言葉
  • 基準となるあいづち
  • 先を促すあいづち
  • 受け止めるあいづち

傾聴とは「話し手の主観的な世界観と気持ちを理解しチカラに変える事」です。

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「オンライン傾聴講座」は皆さんとの交流によって作られています。よろしくお願いします。

 


次回予告「9.伝え返し」

傾聴には「伝え返し(おうむ返し・バックトラッキング)」が欠かせません。「ああ、そうなんだ!わかってくれた!」となるような伝え返しと「話の邪魔をしているの?」というような伝え返しとがあります。良かれと思ってやっている伝え返しが話の腰を折ってしまわないように、そして傾聴をより良いものにするために効果的な「伝え返し」のやり方を次回学びます。

18件のコメント

  1. 「知ってる。」は男性にはタブーなんですね!
    それは意識したことなかったです。
    傾聴する立場になったときにはそれを知っているのはとても大切ですね。
    男性と女性の反応の違いも、意識しながら傾聴の勉強をしたいと思います。

  2. コールセンターで働いていたことがありますが、顔が見えない時のあいづちはやはり大きな力を持っています。
    会話の内容に合った言葉の選択と、相手の話を遮らないあいづちの間ってやはり大切なんだと思いました。
    相手が話しやすい雰囲気を出せる人になりたいと思いました。

    1. 顔が見えない時のあいづちは大きな力があるんですね。知らなかったです。顔で見えなくても、あいづちは大切なんですね!
      こんな貴重なことを共有していただいて、ありがとうございます。

  3. 「3.あいづちのコツ」に紹介されていた言葉がとても参考になりました。
    人と話しているときも、話を聞くのは好きなのですが、いつもなんとあいづちを打っていいかわからず、盛り上がって話してくれる相手に申し訳ないと感じていました。
    わざとらしくなくやるのは難しそうですが、今後活用してみたいと思います。

    1. お相手のことを思いやっているkojiさん、そのお心意気尊敬します。
      是非、活用してみたら、その感想をまた共有してくれると嬉しいです。

  4. テレビ番組の司会者の振る舞いにも、この講座にある内容が大いに含まれているように感じます。ゲストからいかに話題を引き出すか、それをどのように広げ、盛り上げるか。もちろん盛り上げるだけがあいづちではありませんが、テクニックを駆使して司会者が番組を進行していることに気づかされました。テレビの中だけでなく、我々の生きる社会でも同じテクニックを用いれば、より有意義で互いに気持ちよく対話を楽しむことができそうです。

    1. 確かに、テレビ司会者の振る舞いにも、共通するところがありますね。
      テレビ以外にも、福祉系のお仕事をされている人、お母さん、などお手本になりそうな人は周りにたくさんいるのかなと思いました。
      そういう人を真似していくことでより有意義に互いに気持ちよく対話を楽しみたいです!

  5. ここでは「最も大事なのはタイミングです」とあります。この講座を読んで、会話中に相手の非言語情報に気付いてそれに適したあいづちを打つことが大切だと実感しました。またそれらを踏まえて会話の状況をイメージしてみると、あいづちにも「抑揚」や「あいづちを発する時の表情」など非言語情報を付け加える事が大切なのではないか、と気付きました。

    1. 自分の話をしっかりと聞いてくれているのかを分かるには、相槌を打ってもらえるのが一番ですね、分かりやすいからです、自分でも、人の話を聞いているときに、話の邪魔にならない様に、相槌を打っていることが良くあります。

    2. 相槌はとても分かりやすいですね。
      相手の邪魔にならないようにと相手を思いやっていらっしゃるんですね。
      尊敬します。

    3. おおー!
      気づきを共有してくれてありがとうございます。
      確かに、非言語情報も付け加えることが大切だと思います。
      そういわれると私もあいづちの時に、口を動かしたり、目を大きくしたりしているかもしれません。
      今度、その「抑揚」や「あいづちを発する時の表情」で相手が変わるかどうか観察してみようと思いました。

  6. 私は昔から人と話していても「なんか感情がないよね」と言われることが多かったです。
    あまり気に留めてませんでしたが、この記事を読んで、「あー、あいづちに感情がまったくなかった
    」と思いました。
    何も考えずに「へー、すごいね」と。

    たしかここに書いてあることが出来ている人とは話しやすいように思います。
    これからも参考にさせていただきます。

    1. この記事をご覧になって気付きがあったんですね。これから一緒に学べたら嬉しいです(*^^*)

  7. あいづちの大切さは日頃の会話から感じていましたが、これほど深いものとは思いませんでした。
    会話をしていても気のないあいづちをされては話す気がなくなってしまいますし、
    私も面倒になって適当なあいづちを打ってきた覚えがあるので耳が痛くなるお話しでもありました。
    ここで紹介されている素晴らしい数々のあいづち方法をいつか1つでも多く自然にできるようになりたいものです。

    1. 私もここに書かれているあいづちが出来るように練習中です!
      やっぱり、あいづちに気をとられず自然にできるようになりたいですよね。


  8. 「感情:気持ち」に反応する
    という文にビビっときました。
    人にもよりますが、「嬉しい」「楽しい」「悲しい」のような表現をするのが苦手な方が多いように感じます。
    しかし、話し手がこのような言葉を使わなくても、声の震えや手の動きで、話し手の感情の動きが分かるんですね!

  9. Author

    「知ってる!」は男性にはタブー。女性にはOK。
    という感覚があります。男性は評価や上下関係、「自分の方が上だ」的な感覚あります。特に年代が上に成るほどその傾向が強いので、あいづちに「知っています」を使うとアウトです。逆に女性や若者は共感してくれる人が欲しいので「知ってる!知ってる!」ということで共感の輪が広がるの出ないかと思います。
    みなさんも「あいづち」について、気づいたことがあったら共有してください!!

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