5 共感的理解


5 共感的理解

傾聴においては話し手は「共感」を求めています。そもそも人は「共感」してもらえることで自分を保っています。「寒いね」「そうだね」このような日常的な共感から、「ここ10年本当に頑張ってきたね」「応援を続けてくれてありがとう!」という深い関係性だからわかる共感もあります。共感的理解とは初対面の人に対して、「ここ10年本当に頑張ってきたね」と心の底から言えるように傾聴を通して(短時間で)なることであるとも言えます。


1.共感するより共感してしまう

「はい!では今から感動してください!」といわれて感動できるでしょうか?「感動する」というのはなんのきっかけもないのに自発的にする「食べる」「走る」という動作とは違います。共感のゴールは「結果として共感してしまう」ことです。

 

1)共感的理解は感覚的

 

傾聴に慣れてくると話し手が理屈で話しているのか、感情で話しているのかが区別できるようになります。話し手がロボットのようにクールに情報を伝えている時には聴き手の方にも感情は伝わってきません。逆に話し手が感情的になると言葉が乱れ、論理的ではなくなる一方で声が震えたり、顔が赤くなったりと情緒的な反応が出ます。

「理屈じゃないんだ」と何度訴えても論理的な解決方法を提案される。僕が伝えたいのはデータではなくて、この言葉にしにくいいてもたってもいられないこの感じ。この気持ちなんだ。僕の頭の中や胸の中を透視してどんなにぐちゃぐちゃになっているかを見て欲しいよ!(20代 失恋した男性)

理屈か感情かという区別は傾聴する側にもあります。話を聞いているその姿が論理的なのか?情緒的なのか?は話し手にも区別できます。「この感情を受け止めて欲しい」とメッセージを発した時に聴き手が論理的に受け止めていたらがっかりします。目を赤くして、情緒的に「そうなの!!」と受けて欲しい瞬間があるからです。

共感的理解は論理的に話を聞いて、徐々に理解を深めていくのと同じように情緒的に話を聴いて話し手の気持ちがどんな風になっているのかを徐々に理解していくプロセスです。聴き手が自分の「こころ」に話し手の話を響かせながら傾聴しないと深まっていきません。

 

2)気持ちを聴く

ベテランの傾聴をきいていると聴衆全員が泣き始めます。

他の人のエピソードなのに聴けば聴くほど共感してしまい、涙が止まらなくなりました。私とは状況が同じではないのに「さぞ孤独だっただろう」「なんてせつないの!」と自分の中の感情が吹き出してしまいました。傾聴とは名インタビューアーになることだなと感じました。(40代 傾聴を学んでいる人)

慣れている人は傾聴をしている間ずっと相手の気持ちを感じています。話し手の気持ちの揺れを自分自身のこころと体で共鳴させながら聞いているのです。話し手の感情が吹き出して、胸が苦しくなれば、聴き手も胸が苦しくなるほど同調しています。そして、自分自身の心身に響かせながら、「それならこの辺にとても大切な気持ちの塊があるはずですね!」というつもりで促すと話し手は堰を切ったように感情を噴き出させます。

話し手はどんな思いでこのエピソードを体験したのだろう?言葉にできない葛藤があったのではないか?そんな気持ちがあってはいけないと押し殺した気持ちがありはしないだろうか?大人気ないからなかったことにした

 


2.自分自身の心身を感じながら

論理的に話をするのとそれを心身で感じるのとではタイムラグがあります。言葉だけでペラペラ喋っている人はカウンセリングを進めていっても変化しないものです。傾聴をする時にも心身の変化やメッセージを感じ取れるペースでやり取りをするとうまくいきます。

先生の呼吸と私の呼吸のリズムがぴったりあって、ヒモでつながっているような感覚がありました。私が心の中の何かに気づいて、「ああ、そういうことか」と思うと一呼吸して先生が「どうぞ」と声をかけてくれます。なんで私の身体の中で起きていることがわかるのだろうと不思議な気持ちでした。(40代 女性)

自分自身の心身にも問いかけながら傾聴をしていると話し手の心身の状態が掴みやすくなります。呼吸を合わせ、身体の揺れやリズムを合わせ、話し手が感じているであろう感覚を自分でも感じるようにすると共感的理解が一段と深まるのを実感することができます。

この感覚は文章では分かりにくいので、練習会や講座を受講することをお勧めします。

 


▼「共感的理解」まとめ▲

ここでは「共感的理解」についてご紹介しました。

  • 共感的理解とは
  • 共感するより共感してしまう
  • 自分自身の心身を感じながら

傾聴とは「話し手の主観的な世界観と気持ちを理解しチカラに変える事」です。

ページ下にあるコメント欄に「感想」や「質問」をお寄せください。
「オンライン傾聴講座」は皆さんとの交流によって作られています。よろしくお願いします。

 


次回予告「6.誠実さと個人的な話」

本当は「困ったね」と思っていないのにそんなふりをするのは誠実でしょうか?本心では「仕事をしろ」「学校に行け」と思っているのに心配そうな顔をするのは誠実でしょうか?多くの場合、聴き手のそんなチグハグな気持ちを話し手は読み取ってしまいます。「それでも学校に行かせたい場合にはどうしたら良いんですか?」と聞く方もいますが、それは「傾聴の目的」が傾聴することではなく、説得することになっています。相手の気持ちを誠実に汲み取らずに学校に行かせたい場合には「傾聴」ではなく「交渉術」を使えば良いのです。いよいよ次回からスキルの話に入ります。「うなずき」について学びます。

22件のコメント

  1. PTAで役についており、活動についての困りごとなどの相談を受けることがあります。
    私は一生懸命聞いているつもりなのですが、いつも相手の反応が今一つでかみ合っていない感じがしていました。
    『「傾聴の目的」が傾聴することではなく、説得することになっています』という部分を読んで、自分もそうだと気が付きました。
    私は相手に何とか役割を果たしてほしいという気持ちでいっぱいで、自分の気持ちが優先してしまい、相手の話をきちんと「聞いて」あげていなかったんだと思いました。
    そんな気持ちを相手も察していたので、うまくいかなかったんだとわかりました。

    1. PTAでうまくいかなかったご経験があるんですね。
      活動や役割など、具体的にやることがあるときは、なかなか相手の話しを聞くことが難しくなりますよね。
      ご自身のお気持ちも大切にしながら、相手のお話しも聴けるようになったら、何かが変わるかもしれませんね。

  2. 写真のおじいちゃんとおばあちゃん とっても優しそう 苦しい気持ちも、悲しい気持ちも、「人生にはそんなことあるさぁ」と聞いてくれそう
    わたしは、やっぱり大切な人💕に今の気持ちを知ってもらいたい. ちょっとしたことも、大切な人に聴いてもらえたら、嬉しさ100倍😊
    でも、いつもその願いが叶うわけではなく、そんな悲しい気持ち、辛い気持ちを話すなら、やっぱり、こんなおじいちゃんとおばあちゃんに聴いてもらいないなぁ
    人生のいいことも悪いこともうれしいことも悲しいことも、ちゃんと知っていて、共感しつつも、大丈夫、今乗り越えるよって、くすっと心の中で笑いながら聴いてほしいな

  3. なぁーなさん、ステキだなんて、ありがとうございます。照れます。😆
    私は母をやっているので、特にその分野には敏感に共感してしまいます〜。

    もださんはコピーライターさんなのですか?
    確かに母にぐさっとくるコピーとか、ありそうですすよね。

    1. コピーライティングは少しかじりました。実際にコピーライティングの世界で「母への手紙」という項目があります。これは文字の力がどれだけ他人へ影響力を与えるのかという検証になります。詳しく書いている人がいたのでよければご参考になさって下さい。

      https://hitonikyoumi.com/%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E8%AC%9B%E5%BA%A7%EF%BC%94

    2. MODAさん、
      プチッとおして、『母への手紙』を読みました。他のとこも読ませていただきました。

      コピーライターは、商品を売るための広告言葉をつくるのかしら。どんな特徴の商品、他社とどう違う、ターゲットの年齢・性別・属性の人、どんなイメージにしたいと・・・・いろいろ考えて、心に伝わる、買いたくなる言葉を作り出していく。
      売る会社とそのターゲットの人などに、他者の気持ちに共感的理解がないとできないですね。
      コピーライターと傾聴が似てること感じました。日常のいろんなことも、傾聴、共感的理解が重要になっていると思った。

      そういう視点で、日常を見て感じてみようと思った😄いい気づきになりました。
      どうもありがとうございます😃

  4. なるほど。これはコピーライティングの世界にも通じますね。勉強させていただきました。ありがとうございます

    1. もださん
      コピーライティングとは、言葉をうまく使う以上に、人を理解することが大切なのかなー なるほどです!

    2. 確かに、コピーライティングの世界にも通じますよね。
      コピーライティングも傾聴も他の分野も相通じる部分があるのかもしれないですね。

  5. サランさんへ(o^―^o)ニコ
    ステキです💛
    歳とともに、いろんなこと経験して、共感の幅が広がる。
    確かに、歳を重ねれば、経験してきたこと共に、味わってきたうれしいこと、悲しいこと、苦しいこと・・・・気持ちも多くなるから、共感の幅が広がる。なるほど。
    どなたかわかりませんが、サランさんは素敵に生きているのを感じました。

    1. Author

      年を重ねることが素晴らしいことだと思える人生は魅力的ですね。
       
      ともすると機能的なことが求められる社会では40代50代でもすでにお荷物ような扱いになりかねません。
      でも、いろいろなことを経験して、いろいろな感情を体験していたら、共感の幅が広がると思ったら、、年を重ねることが素晴らしいことのように思えてきます。
      こういう気づき、関わり合い。とても素敵ですね。

    2. そうですよね。私も年齢を重ねることで親へ感謝できるようになりました。もっと言えば父親になったからこそ父親の気持ちを理解できるようになりました。そして、父親の気持ちを少しだけ理解したときに父親へ「一緒に旅行でも行こう?」と誘いました。そんなわけで先週、父親と二人きりの旅行へ行ってきたのですが、喜んでくれました。父親の気持ちを共感できたからこそ少しだけ親孝行できた気がしました。楽しかったです

  6. なぁーなさん、そうですね。ヒーローインタビューなど、アナウンサーが、感情をこめて、「今のお気持ちは!」と言うと、選手もより感情をこめて話すから、見ている方も同じ気持ちになって、ワクワクします。
    歳を重ねるごとに、テレビを見ていても、よかったね〜、と思ったり、辛かったね〜、と思って一緒に泣けてきたりすることが増えました。それは歳とともに、いろんな経験をして、共感する幅が広がったからなのか、それとも歳のせいなのか‥?(^_^;)

  7. コメントから、発見が2つありました。
    1つ目は、「(理屈)(理屈)(理屈)どうですか?」と理屈でインタビューすると、気を使いすぎて感情がでにくい。答える側も構えてしまう。
    →ちょっとした不安から、無難、安全を考えたコミュニケーションを考えると理屈になるのかな。。。。そう考えると、理屈も心の表れとしてありだろうが、気を使いすぎる、構えるコミュニケーションは疲れる。
    私は、感情が出てる話のほうが好きで、わくわくするから、理屈で話すのを減らそうと思う。そしたら、面白い話が聞ける。面白い広がりとつながりができると思った(o^―^o)ニコ
    2つ目は、「意識して、意識して身につけて、本番では忘れる。これが基本です」いいことを教えてもらった。
    →大切な時、本番で意識しがちだけれど、逆ね。逆に頑張ってもダメじゃないけど、日々意識して、大切な時に忘れる。基本を忘れないように。忘れないように(o^―^o)ニコ

    なんとなくやってるコミュニケーションについて、今日もいい勉強になりました。
    いつもどうもありがとうございます(o^―^o)ニコ

    1. Author

      なぁーなさんのように「どんな風に伝わったか」を教えてもらえるととても嬉しいです。
       
      不安がぐるぐる思考につながっちゃいますよね〜
      「この人は安全だ!」と感じてもらえるような人になりたいな!

  8. メルマガの共感的理解のコツを読みました。1、真剣に話を聞く。2、相手の体験を追体験。3、自然と共感。なかなか、文字にするのは、難しいのに、わかりやすく、具体的でコンパクトにまとまってるんで、実際に話を聞くときに実践しやすいと思いました。
    インタビューも、多くを語らず、感動的に引き出すってどんなだろうと想像してみました。やはり、相手の気持ちを感じていると、自然とそうなるところがあるのかな。演出しようとし過ぎると、不自然になり、相手の気持ちを情緒的にさせ過ぎちゃたり、おかしな雰囲気になるだろうかな。自然と共感じゃなく、不自然な雰囲気になってしまうよなと。自然の直感を信じていきたい(o^―^o)ニコ

    1. Author

      インタビューも聞く側が作戦を考えすぎると答える側も意識して整然と答えてしまいますよね。スポーツのインタビューなんかは感情が表に出て北島選手の「きもちいい!!」の方が伝わることもあります。(ネタが古いか)

      今回の冬季オリンピックはインタビューアーが理屈っぽすぎて、答える側も「応援してくれる人」「仲間」「視聴者」などに気を使いすぎていて感情が伝わりにくかったですね。事前情報を盛り込みすぎると「(理屈)(理屈)(理屈)どうですか?」というインタビューになってしまうので、答える側も構えてしまいますよね。「今のお気持ちは!」「やった!」の方が伝わってくるものが多い気がします。

      演出しすぎると不自然なのはまさにそうですね。
      意識して、意識して身につけて、本番では忘れる。これが基本です。
      いつもありがとうございます!




  9. 話し手がひどい言葉を浴びせられたと聞いた時に、
    私も思わずため息をついてしまいました。
    「この方は、精神的に辛い状況なのに、それに輪をかけてこんなひどい言葉を浴びせられるなんて…」
    と思ったからです。
    今、思えば共感してしまったのだと思います。

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